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岡本家記録とは別の話(4月篇)

 岡本家記録(Web版)もご参照ください。

 ということで、ここでは上記に書かれていない記録を書くことになります。本編は読書日記なので、それ以外の雑記関係をこちらにまわしてみることにしました。

装幀:重原隆

ブックハンターをめぐる冒険
 牧眞司の『ブックハンターの冒険』(学陽書房)が出ました。ブックレビューは上記のページを見ていただくとして、SF関係者である著者の人柄を知る上でも興味深い本といえます。著作物を知るのに、著者を知る必要性など元来ありませんが、分かった上で読む楽しみも出てくるでしょう。
 本書の検証点を列記しましょう。
 まず、献辞を字義どおりに読むと、生活費を妻に一銭も渡さず、古本購入にひた走る著者の残虐非道さが明らかになり、世間一般の古書籍コレクターに対する常識を裏付けます。帯もそうですね、世界で一番楽しい場所は自分の書庫だ、といっているわけですから(*1)。ということならば、本書は単なる奇人変人の奇行エッセイとなってしまいます(*2)。そこで、

検証点1:牧眞司は奇人か?

 その昔、牧眞司は水鏡子を師と仰ぐ一連の集団(*3)の一人でした。まーなんというか、水鏡子もまた古本オタクな人なのですが、ちょっと種類が違います(このことは『乱れ殺法SF控え』(青心社)(*4)を読むと分かります)。当時、彼は、関西で1977年に1回だけ開かれたSFセミナーを東京で再開するために、いろいろと活動をしていたはずです。東京版SFセミナーは80年から20年間継続されたわけですから、そういったファンダムでの功績も多大。TOKON8では事務局長までやって、事務能力(たぶん)ゼロの水鏡子よりもエライことを証明してもいます。従って、牧眞司は、本書で印象付けられるほどの奇人ではないことが分かります。

検証点2:牧眞司は冷血か?

 さて、最初に戻って、残虐非道さについて検証しましょう。まず、牧眞司の奥さんというのは、筆者がSF大会をやっていたころの仲間で、そのスジの人です。心配はいりません(*5)。結婚してからわかる夫の秘密などという問題はなし。もし、あなたがまだ独身で、世間よりも過激な趣味を持ち、一生続けたいのならば、同好者以外とは“絶対”に結婚してはいけません。いくらコトバで説明しても、趣味の実情は理解されないので、そこを誤解して結婚した人は不幸になります(たぶん)。例えば、本の重さが1トン(たったの2〜3000冊分)あると聞いて量を実感できる人は普通いません(*6)。従って、牧眞司の性格がどうあれ、誰も不幸ではないことがわかります。

検証点3:『ブックハンターの冒険』

 筆者もまた、過去古本屋めぐりをしてみたり、古書会館やデパートの古書展に行ってみたりと、本書に書かれたような活動をした時期があります。とはいえ、牧眞司のような地の利は得られず(ブックハンターになるなら都会人)、遠い昔に挫折した暗い過去があります(*7)。これから古本趣味に走る人がどれだけいるかは疑問ですが、本書を読んでその気になったら幸いですね。需要がなくなれば、本は消え去るのみ。とはいえ、本書の半分はある種の読書ガイドになっている、という面もあります。この部分、必ずしも古本を通じた楽しみばかりとはいえません。本書の趣旨からいえば、本当は、ウソでも徹底すべきなのでしょうが、無意味なハッタリがないのは、著者の誠実さの表れかも。


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